洋室の世界を知った日
生まれも育ちも山形。
私が幼少期を過ごしたのは
「和室しかない家」でした。
近所に住んでいた幼なじみの家も
同じように
和室しかなかったんですよね。
当時、私が育った地域では
それがごく当たり前の風景だった気がします。
そんな「和室の世界」で
暮らしていたある日
小学校で出会った友達の家に
遊びに行くことになりました。
都会から引っ越してきた
その子の家は、社宅の新築一軒家。
中に入ってみると
そこに広がっていたのは
白い壁と明るい木目のフローリングでできた
「洋室の世界」でした。
それまでテレビドラマでしか
見たことがなかった「洋室の家」に
友達が暮らしていることは
私にとって、大きな衝撃でした。
それはまさに
ずっと憧れていた世界だったからです。
その日以来、私はこの友達の家に
しょっちゅう遊びに行くようになります。
白い壁のせいか
和室よりも部屋の中が明るくて
子どもながらに、その居心地の良さを
感じ取っていたのかもしれません。
そういえば
初めてミルクティーを飲んだのも
その友達の家でした。

子どもだった私が興味を持ったもの
「洋室の家」に住んでいた友達は
山形弁を話していませんでした。
その友達と遊んでいると
私の話し方がいつもと違うと
母から言われたことを覚えています。
自分では意識していなかったのに
自然と変わっていたんだと思います。
子どもは特に、触れるものや環境から
無意識のうちに影響を受けるもの。
そして、これまでを振り返ってみると
結局は、自分の興味があるものに
心が惹かれていたようです。
当時は、インターネットが無い時代で
雑誌や新聞が貴重な情報源でした。
母が買ってきた主婦向けの雑誌に
インテリアの記事をみつけると
私は思わずそのページをめくっていました。
また、本屋さんや図書館では
インテリア特集を探して手に取ったり、
家では、新聞に折り込まれた
建売住宅やマンションの広告を見ることも
次第に楽しみのひとつになっていきました。
間取りを見ながら
あれこれ想像する時間がとても好きだったんです。
限られた情報源の中に間取り図をみつけると
私は時間を忘れて、ずっと眺めていました。

インテリアに夢中になった最初の記憶
中学生の頃
自宅の水まわりのリフォームで
洗面所とトイレの壁紙を選ぶ機会がありました。
業者の方から渡された見本帳には
様々な壁紙がありました。
特に白やベージュ系が多かったように思います。
「これを選んだらどうなるんだろう」
そんなふうに
いろんな壁紙をイメージの中で
当てはめていくのが楽しかったです。
母と相談しながら最終的には
小さなチューリップのようなお花が
散りばめられた壁紙を選びました。
とてもささやかな思い出ですが
インテリアに没入する人生は
ここから始まった気がしています。
自分で壁紙を選ぶことが
とにかく楽しかったんです。
そして、選んだ壁紙が実際に貼られると
洗面所も、トイレも想像した通りの空間になり、
頭の中にあるイメージが
ぴったり具現化されたことに満足感を覚えました。
「壁紙が変わると、空間が変わる」
そんな感覚を
この時に初めて体感したように思います。
自分で選んだ壁紙の中で過ごす毎日からも
私はインテリアのチカラを感じ取っていました。
そこからは、
和室の砂壁を白い布で覆ってみたり
家具の配置を変えてみたり
パーテーションで空間を仕切るなどして
できる範囲で部屋の模様替えを楽しみました。
そして高校生の頃、私は
「インテリアコーディネーター」という職を
知ることになります。
「壁紙やカーテンを選べるなんて素敵だな」と
なんとなく思った私は
その道に進みたいと思いました。
しかし、当時の規則で
22歳以上でなければその資格は取れなかったため
まずは短大で建築学を学ぶことにしました。

夢はインテリアコーディネーター、一択
短大では建築学科で
建築の”基礎の基礎”を学び
卒業後は建築関係の会社に就職。
そして短大卒業から7年が経った頃
転職を経て、念願の
「インテリアコーディネーターアシスタント」
になることができました。
こうして振り返ってみると
人生のふとした分かれ道で私はいつも
コーディネーターの仕事に就くための道を
選び続けてきたんだと感じます。
建築学科のある短大を選んだこともそう。
建築関係の会社に就職したこともそう。
どの選択も、当時の私にとっては、
とても自然で、当たり前だったように思います。
今では、コーディネーターのキャリアは20年を超え
これまで手掛けた住まいは、400棟を超えます。
ここまで続けてこられたのは
ただただ、この空間づくりの仕事が
好きで仕方がなかったからです。
加えて、「お客様のイメージに
”ぴったり”のものをみつけたい」という
好奇心が尽きることがなかったから。
「お客様の理想のインテリアを
叶えるためならとことん尽力してしまう」のは
おそらく私の性分であり
その性分は、学びの意欲にもつながり
8つもの資格を取得しました。
インテリアコーディネーター
二級建築士
窓装飾プランナー
住まい方アドバイザー
キッチンスペシャリスト
整理収納アドバイザー2級
カラーコーディネーター2級
福祉住環境コーディネーター2級
新人の頃は、先輩や上司に教えていただきながら
新しい知識を得ていくことがとても新鮮で、
学ぶことが楽しくて仕方がありませんでした。
あの頃から今までずっと
お客様のイメージに”ぴったり”のインテリアを
つくり上げていくことに夢中でいます。

この世界で、たった一つのパズルを組み立てていく
これまで私は
新築注文住宅を建てるお客様の担当を
長くしてきましたが
お客様の約95%はご家族で
お子さまのいる20代後半〜40代の方が
多かったです。
ただ、お客様に共通する点を
挙げるとするなら、おそらくそこまで。
いろいろなお客様がいらっしゃいますし
ご要望も本当に様々です。
実際、これまで担当してきた中で
まったく同じ家を望まれる方に
出会ったことがありません。
そう考えると、お客様との出会いは
「この世界でたった一つのパズル」と
出会うようなことなのかもしれませんね。
パズルの完成図は
お客様の頭の中にあるイメージ。
私は、そのイメージをお客様から引き出し
細かいピースを組み立てて
パズルを完成させていきます。
この「世界でたった一つしかないパズル」を
完成させるためなら
私は、時間も労力もいとわないところがあるので
「そこまでやるんですか!」と
驚かれることもあるのですが…。
ピースが”ぴったり”はまった時の
達成感と爽快感が好きなので
ついつい、没頭してしまいます。

子どもの頃から、”ぴったり”完成させてきた
思い起こせば、子どもの頃から
”ぴったり”完成させることが好きでした。
幼なじみに誘われて始めたビーズ細工もそうです。
ビーズの本を買ってもらい 、つくり方を見ながら
コツコツと作品をつくっていました。
最初は、平織りのような
平らなものに挑戦した記憶があります。
立体感のあるものの方が
難易度は高いんですよね。
本に載っている完成形を見ながら
ビーズを一粒ずつ、ワイヤーに通していくのですが
ほんの少しでも違えば
仕上がりは変わってきてしまいます。
きちんと成功させるには
正確に、丁寧に、つなげること。
そうやって一粒一粒
慎重につないでいった結果
本に載っている完成形と
まったく同じものが出来上がります。
作品をつくり上げたときの達成感は
何とも言えないものがあり
その感覚は、今の仕事の
土台になっていると思います。
そして、細かなパーツをつなげて
組合せていく感覚は
どこか家づくりに通じるものが
あるような気がしています。
家づくりもまた、お客様のご要望を
一つずつ丁寧に汲み取り
組合せてカタチにしていくものだからです。
ただ、子どもの頃のビーズ細工とは違って
家の完成形は
あらかじめ用意されているわけではありません。
お客様の頭の中にある
「まだ言葉になっていない完成形」を
一緒に探していくことから、家づくりは始まります。
それは決して簡単なことではありませんが
だからこそ、大きなやりがいがあり
心から向き合いたいと思える仕事です。
そして、完成した家を心から喜んでいただけた時
すべてが報われたと思えるのです。

私がChat GPT!?
いつからか
「検索するより、スガイさんに聞いた方が早い」と
まわりの人たちから思われるようになりました。
20年に渡るインテリアコーディネーターとしての
経験と知識がすべて
私の中にデータとして蓄積されてきているので
それらを使えば、どんなご要望に対しても
「こうすれば、こうなる」は
わかるようになりました。
すると、気づけば社内では
インテリア関連の相談窓口のようになっていました(笑)
このことを、ある方に話したら
「ヒトミさんってChat GPTみたいだね」と
言われたんです。
最初にそう言われたときは驚きましたが、
話を聞いて「なるほどな」とも思いました。
私は好きでやっていることなのですが
常に新しい知識をインプットしていることも
まるでChat GPTに学習させているような
感じなのかもしれないですね。
インテリアの話なら
何時間でもできてしまうところも
Chat GPTに似ているのかもしれないなと思います。

枠にとらわれず、お客様に寄り添う仕事がしたい
一言で「インテリアコーディネーター」と言っても
実は会社によって仕事内容が異なります。
内装の仕様決めのみを
コーディネーターが担当する会社もあれば、
内装の仕様決めに加えて、
室内デザインの打合せ内容を反映しながら
平面詳細図、展開図、電気配線図等の
実施設計の作図までを
コーディネーターが担う会社もあります。
この詳細図面を作成するところまで
任せてくれた会社での経験が
今の私の基盤をつくってくれたと実感しています。
その会社では、時間を問われることなく
納得いくまでインテリアのデザインや
図面づくりに取り組めました。
長時間労働になることもありましたが
全く苦になりませんでしたし
嬉々として働いていました。
私は「このお客様はこんな感じの好きかな」と
常に考えてしまうので
時間や仕事内容に枠を与えられると
途端に窮屈に感じてしまいます。
逆に、お客様との打合せの中で
キッチン収納や洗面台など、
既製品ではなくオリジナルのものをつくりたい
というご相談が出てくると、
自然と気持ちが前のめりになります。
お客様の「こんなふうにできたら」という
想いに寄り添って
一緒につくり上げていきたいからです。

家づくりの時間も、幸せなものであってほしい
新築注文住宅の家づくりは
場合によっては
打合せの期間がとても長くなります。
例えば、打合せ中にお腹の中にいた赤ちゃんが
お引き渡しの頃には
ママに抱っこされていることもあります。
そういうご家族の風景を見ていると
「貴重なお時間を共に過ごさせていただいたな」と
思います。
打合せでは
ご家族の未来の話をお伺いすることもあります。
その度に、お客様の人生に深く関わらせていただいている
実感があります。
家が完成すれば、私の仕事は役目を終えますが
この家で成長されていくお子さまと
ここで過ごすご夫婦のストーリーは
未来へと続いていきます。
家づくりは、決めることが本当にたくさんあります。
その打合せがお客様の負担になることなく
お客様の未来への希望の時間に
なるといいなと思いますし
幸せな人生を育む家ですから
その過程も
幸せなものであるといいなと思っています。

ご要望を、一つ一つ叶えること
二世帯住宅のお客様を
担当した時のことです。
お客様のご実家が東日本大震災で
半壊状態となったため
ご両親と同居される家を
建て替えたいとのことでした。
被災後、仮設住宅に住まわれていたご両親。
新しい住まいに希望されたのは
1階の間取りを
住み慣れた以前の家と大きく変えないことでした。
それから、既存のお品物や家具も
いくつか持っていきたいとのこと。
その中には 「ケース入りのお人形」もいくつかあり
お母様は
「棚をつくって並べたい」と希望されました。
そこで私は、
ケースの台数と正確なサイズを把握するため
「サイズを測らせていただけませんか?」と
お願いしました。
お人形ケースのサイズを一つずつ測るため
半壊となった住宅に伺い、
ご要望に添うように棚のサイズを決めて
お人形がすべて並ぶようにしました。
また、既存の家具について
「造り付け予定のTV台の脇に並べて置きたい」
というご要望をいただいたので、
あらかじめお客様に測っていただいた寸法をもとに、
図面にそのスペースを反映させ、TV台を設計しました。
そして、完成した家に家具を設置したとき、
まるで最初からそこにあったかのように
ご希望の位置に納まりました。
お客様ご家族をはじめ、引っ越し業者さんにも
「すごい、”ぴったり”ですね」と
言ってもらえましたが
この”ぴったり”を叶えることが
私の得意とするところで、喜びなのです。

お客様の理想と未来の家を、つなげていく
コロナ禍以降、おうち時間を大切にする方が増え
インテリアへの関心が、より高まりました。
また、SNSが普及した影響で
誰もが、昔よりも手軽に
インテリアのイメージを持てるようになったことで
ご自身の希望をあらかじめ準備して
打合せに臨まれるお客様も増えました。
ただ、そのご希望をカタチにするには
十分なヒアリングと時間が必要です。
しかし近年では、会社やお客様のご都合で
短期間で内装の仕様を決めなければならないケースが
増えています。
一旦決められたあとに、お客様の方で
思い直されて、連絡が来ることもしばしば。
時間的に間に合えば変更の対応もできますが
いつも「もう少し時間があったら」と感じます。
そんな時間の制限によるモヤモヤを感じながら
仕事をしたことがきっかけで
お客様が決して妥協することなく
理想と”ぴったり”の家を建てられる
「環境」と「時間」を整えたいと
願うようになりました。
とはいえ、
ハウスメーカーやビルダー、工務店に依頼すれば
土地や間取りの打合せ、金額の調整、そして契約。
その後は、詳細図面と内装仕様の打合せを経て、
一気に工事が進みます。
ですが、そこには適切な相談相手がいない場合も
少なくありません。
ここでいう、適切な相談相手とは
「お客様の理想」と「未来の家」とをつなげる
架け橋のような存在のことです。
そんな存在がいないままで理想の家を建てるのは、
正直なところ大変だろうなと感じます。
なぜなら、お客様の「本当にやりたいこと」を
どうやってカタチにするかを理解する人が
どうしても必要だからです。
その役割を私は20年間、夢中で続けてきました。
お客様の理想の家をつくるために
お客様の頭の中にある「正解」を一つひとつ
”ぴったり”当てていきたい。
さらにその喜びをお客様と一緒に分かち合いたい。
だからこそ、お客様の理想を叶えたいと
心から願っています。
そのために私は、経験と知識というデータを
しっかり蓄えてきました。
ですから、私の前では安心して
「あなたの理想」を存分に話してください。
その想いは、きっと叶いますから。
